弱者対策手つかず 個人情報保護法──作れぬ「命のリスト」

日経ニュース関西版【2007年1月16日】によると、
高齢者、障害者、外国人ら災害時の避難や生活に不安がある災害弱者のリスト作りが各地で難航している。

2003年に施行された個人情報保護法などが壁になっている。多くの自治体は、内部の情報共有でさえ条例上の手続きが必要。自治会など外部への情報提供は悪用防止を担保する妙案がなく、さらに後ろ向きだ。兵庫県が昨年7月から招集した会議の遅れを、委員は「個人情報を盾に、職員は仕事を増やしたくないと思っているのでは」と勘繰るが、「どうしていいか分からない」(県防災計画課)のも本音だ。

災害弱者の実態を事前に把握する必要性は、阪神大震災だけでなく、04年相次いだ台風被害や新潟県中越地震などでも再認識された。内閣府は06年、リストや対策などを作るようガイドラインで通知した。

 北海道室蘭市は昨年10月、市が持つ要援護者情報を災害時の利用目的に限定し町内会などに提供できる例外措置を決めた。東海地震で被災する恐れがある愛知県豊田市は、1人暮らしの高齢者などに事前に同意してもらって作ったリストを自治会などと共有する。ただ自治体が主導する動きは少数だ。

 実際の災害時に救助に動く地域が主体となって取り組むケースもある。神戸市東灘区の魚崎地区は昨年11月、自治会が「災害時要援護者登録票」を全戸配布した。援護が必要な人は用紙に書き込み、併せて支援者の署名を添え、封をして提出。普段は開封しない。

 「誰かが『ほっといてくれ』と言ってきたら、『火元になったらどうする。あんただけの問題ちゃう』と説得する」。震災後の新住民が半数に上るなか、自主防災組織の室谷弘文会長(71)の言葉には、被災地ならではの思いがにじむが、市内で同様に取り組もうとする他地域はまだない。

 個人情報保護の意識の高まりが、様々な作業を難しくしている。いったんリストができても、担当者の引き継ぎや内容更新は大変だ。震災の直後からリスト作りに取り組んだ静岡県のある自主防災組織では、役員が交代してからの数年、更新が滞ったままという。

 行政や地域団体、介護事業者などがそれぞれ持つ災害弱者の情報が、「万が一」の際にほとんど利用できない現実。新たに生まれた法律に対し、戸惑っていては手遅れになりかねない。人の命をどう守るかが問われている。

投稿者 文洋株式会社 : 2007年6月14日 17:05